窃盗事件で逮捕されたら

刑事事件の中でも、窃盗罪は多い類型です。令和5年における検挙人員の罪名別構成比では、窃盗が全体の46.7%を占めています。「物を盗んだ」ことが明白であったとしても、刑事手続やその後の処分には様々な要素が絡みます。今回は、窃盗事件において、弁護人が果たす役割や、依頼者にとって重要となる弁護活動のポイントをご紹介します。

1 窃盗罪とは

窃盗罪は、刑法235条により「他人の財物を窃取した者は、10年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金に処する」と定められています。

構成要件としては、①他人の財物を②窃取することになります。また、③不法領得の意思が必要となります。

「窃取」とは、財物の占有者の意思に反してその占有を侵害し、自己又は第三者の専有下に置くことをいいます。

2 窃盗事件で問題となる事情

窃盗事件では、以下のような事情により評価や処分が変わっていきます。

  • 反復・常習性の有無(再犯か否か、同種前科や前歴の有無)
  • 窃盗の目的や性質(営利目的か、自家用か)
  • 被害額の多寡
  • 被害者との示談成立の有無

また、反省の態度や犯行に至るまでの事情などの個別事案に応じた情状も重要となってきます。

3 弁護人よる弁護活動のポイント

弁護人は、以下のような観点から弁護活動を進めていきます。

① 勾留回避・早期の身柄解放に向けた活動

逮捕された場合でも、身体拘束の必要性が低い場合には、勾留請求に対する意見書を提出し、勾留の阻止に動きます。また、勾留後であっても、勾留に対する準抗告を行うなど、早期の身柄解放を目指します。

② 示談交渉のサポート

財産犯である窃盗罪において、被害者との示談や被害弁償は、重要な情状となります。示談が成立することで、起訴猶予や執行猶予付き判決につながる可能性が高まります。弁護人は被疑者・被告人と被害者との連絡窓口となり、適切な示談の成立を目指します。

③ 再犯防止に向けた支援

窃盗の常習性がある場合、医療機関での診断・治療の受診や、保護観察等の社会的支援との連携が求められる場合があります。このような場合には、弁護人は、再犯防止の観点からも必要な医療的・社会的アプローチを提案します。

このように不起訴・執行猶予を目指すにあたっては、弁護人の活動が重要となってきます。

4 まとめ

窃盗事件において、弁護人は、逮捕・勾留された場合の対応、被害者との示談、再犯防止策など、多角的な観点から依頼者の弁護活動をします。

刑事手続は迅速かつ冷静な対応が求められます。ご家族やご自身が窃盗事件に巻き込まれた場合には、できるだけ早い段階で刑事弁護に精通した弁護士にご相談ください。