
最近、市役所などから「亡くなったおじいさん名義の空き家について、相続人として対応してください」という手紙が届いた、というご相談が増えています。
このような手紙が届いた時点で、おじいさんが亡くなってから10年、20年と経過していることも少なくありません。
相続放棄は「3か月以内」にしなければならないと聞いたことがあり、「もう相続放棄はできない」と諦めてしまう方もいるかと思います。
しかし、3か月を過ぎていても、相続放棄が認められるケースはあります。むしろ、役所からの手紙が届いた今こそ、相続放棄ができるかどうかの分かれ目になることがあります。
そこで、今回は、役所から空き家についての通知が届いた場合に、相続放棄ができるのかについて、解説していきます。
相続放棄や空き家の相続についてお悩みの方は、当事務所までご相談ください。
1 なぜ役所から通知が届くのか
不動産の名義人が亡くなっているにもかかわらず、相続登記がされずに放置されていることがあります。このような場合、役所は戸籍などを調べて相続人を特定し、連絡をしてきます。
通知が届く主なきっかけとしては、次のようなものがあります。
- 固定資産税を誰に課税するかを決めるため(「相続人代表者指定届」の提出を求められるなど)
- 空き家が老朽化し、倒壊や草木の繁茂などのおそれがあるため(空家等対策特別措置法に基づく連絡)
- 相続登記の義務化(2024年(令和6年)4月施行)により、所有者不明の不動産の解消が進められているため
おじいさんの代から相続登記が放置されていると、相続人は子、孫、おい、めいへと広がり、数十人になることもあります。その一人として、突然、自分のもとに手紙が届くことになります。
2 相続放棄の期限(熟慮期間)
相続放棄は、家庭裁判所に相続放棄の申述をすることで行います。
この申述は、「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」にしなければならないとされています(民法915条1項)。この3か月の期間を熟慮期間といいます。
そのため、おじいさんが亡くなったのが10年以上前であれば、3か月はとっくに過ぎているから相続放棄はできない、と考えてしまうかもしれません。
しかし、ここで大切なのは、熟慮期間のスタートは、亡くなった日ではなく、「知った時」であるという点です。
3 3か月を過ぎても相続放棄ができる場合
⑴ 財産があることを知らなかった場合
最高裁判所の判例(昭和59年4月27日判決)は、相続財産が全く存在しないと信じ、そのように信じたことに相当な理由がある場合には、熟慮期間は、相続財産の存在を認識した時(または通常これを認識できた時)から始まるとしています。
例えば、おじいさんとは疎遠で、おじいさん名義の空き家があることを全く知らなかったという場合、役所からの通知によって初めて財産の存在を知ったといえることがあります。
この場合には、通知を受け取った日から3か月以内であれば、相続放棄が認められる可能性があります。
⑵ おじいさん→お父さん→自分と相続が重なっている場合
おじいさんが亡くなった後、相続の手続をしないまま、お父さんも亡くなっているというケースもよくあります。これを再転相続といいます。
最高裁判所の判例(令和元年8月9日判決)は、このような場合の熟慮期間について、自分がお父さんからおじいさんの相続人としての地位を引き継いだことを知った時から始まるとしています。
そのため、お父さんの相続は既に済ませていても、おじいさんの相続については、相続放棄ができる可能性があります。
⑶ 財産の調査に時間がかかる場合
相続人が多数にわたる場合や、他にも財産や借金があるか分からない場合には、3か月以内に調査を終えることが難しいこともあります。
このような場合には、3か月以内に家庭裁判所へ熟慮期間の伸長を申し立てることで、期間を延ばしてもらうことができます。
4 相続放棄をする際の注意点
⑴ 空き家に手をつけない
相続財産を売却したり、取り壊したりすると、相続を承認したものとみなされ(法定単純承認)、相続放棄ができなくなるおそれがあります。
そのため、役所から通知が届いても、空き家の解体や売却、名義変更などを先に進めることは避けることが大切です。また、役所への回答書類に署名・提出する前にも、その内容を確認しておくことが大切です。
⑵ 3か月を過ぎた理由を丁寧に説明する
亡くなってから3か月を過ぎた相続放棄の申述では、家庭裁判所は、なぜ今になって相続放棄をするのかを確認します。
そのため、申述書とあわせて、いつ、どのように相続人であることや財産の存在を知ったのかを説明する書面(上申書)や、役所からの通知書などの資料を提出していくことが大切です。
説明が不十分な場合には、家庭裁判所から追加で照会を受けたり、申述が受理されなかったりすることもあります。
⑶ 受理されても争われる可能性がある
相続放棄の申述が受理されたとしても、それで相続放棄が有効であることが確定するわけではありません。後に、債権者などから裁判で相続放棄の有効性を争われる可能性もあります。
そのため、最初の申述の段階から、事実関係を正確に整理しておくことが重要になります。
5 相続放棄をした後の空き家はどうなるのか
相続放棄をしても、空き家の管理をし続けなければならないのではないか、と心配される方もいるかと思います。
2023年(令和5年)4月施行の民法改正により、相続放棄をした人が財産を保存する義務を負うのは、相続放棄の時にその財産を「現に占有している」場合に限られることが明確になりました。
そのため、一度も住んだことがなく、鍵も持っていない空き家であれば、通常は、相続放棄後に管理の責任を負い続けることはありません。
相続放棄が受理された後は、役所に相続放棄申述受理通知書の写しを送り、相続人ではなくなったことを伝えることになります。
6 通知が届いたら、すぐに弁護士に相談を
役所からの通知を受け取った日が、相続人であることや財産があることを知った日と判断されることがあります。つまり、通知が届いた日から3か月のカウントが始まっている可能性があります。
「昔のことだから」「どうせ相続放棄はできないだろう」と通知を放置してしまうと、本来は相続放棄ができたはずの機会を失ってしまうことにもなりかねません。
また、3か月の間には、戸籍の収集、ほかの相続人の確認、上申書の作成など、やるべきことが多くあります。早期に弁護士に相談することで、期限内に必要な準備を進めていくことができます。
通知が届いた際には、次の点に気をつけてください。
- 通知書と封筒を捨てずに保管する(受け取った日が分かるようにするため)
- 空き家の売却、解体、名義変更などはしない
- 役所への回答書類に署名・提出する前に、弁護士に相談する
当事務所では、熟慮期間を過ぎた後の相続放棄の申述についても対応しております。期限が迫っている場合の特急対応も可能です。
7 まとめ
相続放棄の期限である3か月を過ぎていても、事情によっては、相続放棄が認められる可能性があります。ただし、そのためには、通知が届いてからの迅速な対応が欠かせません。
役所から空き家についての通知が届いた方、相続放棄ができるか分からずお困りの方は、お一人で悩まず、早めに弁護士にご相談ください。
当事務所は、JR高崎線上尾駅西口から近く、上尾市、伊奈町、桶川市、北本市、鴻巣市、さいたま市、川越市をはじめ、埼玉県内のご相談者様に対応しております。また、相続放棄のご相談は全国対応しております。相続に関するご相談の詳細は、遺言・相続に関するご相談のページもご覧ください。
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